射手座の有名人

たちの第一印象として最も多く感じるのは、「はっきり物を言う」ということでしょうか。若い女性タレントでは、観月(みづき)ありさ、牧瀬里穂、宮崎あおいのように、明るくてはきはき物を言う、クラス委員のようなタイプが多い。中高年の射手座女性で目立つのは、社会党の委員長だった土井たか子や“仕分けの女王”こと蓮舫(れんほう)、あるいは評論家の勝間和代や女優の加賀まりこのように、物事を論理的にはっきり言う、いわば「女性弁護士」タイプ。かなりの「毒舌」もいますが、牡羊座の田原総一朗、島田紳助、細木数子のように攻撃的な物言いの迫力で相手を圧倒するとか、また山羊座のビートたけし、おすぎとピーコ、田中眞紀子のように辛辣(しんらつ)な皮肉を言うというタイプでもない。たいていは正攻法で論理的に攻めます。あとで述べるように、それだけの論理を駆使(くし)する才能がある人が多いということでもあります。（もっとも、射手座の綾小路(あやのこうじ)きみまろの毒舌の芸は、皮肉満載ですけど）

ただ、射手座にはこうした論理的な思考をする能力を持っているというだけでなく、「束縛(そくばく)を嫌い自由を求める」という基本的性質があるため、その発言もかなり奔放(ほんぽう)な、いわゆる放言に近いものになる人も少なくありません。元首相の池田勇人(はやと)が「中小企業の五人や十人、自殺してもやむを得ない」「貧乏人は麦を食え」というような意味のことを言ったのも、「限りなく放言に近い失言」といえましょう。しかし、こうした発言も自分なりの信念があって言ったことで、弁舌さわやかでも言葉を弄(もてあそ)ぶ傾向のある双子座と異なり、射手座は自分の主義主張を大事にします。野球の落合博満、歌手の松山千春、映画監督の井筒和幸のような奔放な発言をするタイプでも、あるいは森田健作のようなマジメなタイプでも、「オレ流の正しさ」にこだわるというのが射手座です。

加賀まりこは、バラエティー番組の最中に、ある女性タレントの発言をたしなめたということですし、小雪は横柄(おうへい)な監督やディレクターがいると、「監督、ちょっと降りてきてくれません？」とかいって文句を言うということです。射手座は正義感の強さということでは十二星座でトップといってもいいでしょう。なにしろ「弁護士タイプ」ですから。

また、射手座の自由奔放、および束縛を嫌う傾向というのは、その発言にかぎらず、すべての行動に現れます。たとえば、皇族のなかでもしばしばその自由奔放な言動が話題になった秋篠宮はその典型ですが、一時週刊誌に載った「皇籍離脱願望」にしても、射手座の束縛を嫌う性質の現れといえるでしょう。

芸能人でも、かつて優等生タレントの荻野目洋子でさえ、「（束縛されると）爆発して失踪(しっそう)したくなる」と発言していました。また、良きにつけ悪(あ)しきにつけ多くの話題を振りまく市川海老(えび)蔵(ぞう)も、十代の頃は伝統的で束縛の多い歌舞伎(かぶき)界に反発して別の道に進もうと考えたこともあったということです。ただ、こうした“型破り指数”も、勝新太郎のように社会が許容できる限度を越えると、世間も眉(まゆ)をひそめることになるといえましょう。そしてベートーベンのような射手座のエライ人も、自由を求め、社会的束縛を嫌うという点では人後(じんご)に落ちません。

ベートーベンは射手座に太陽も月もありますが、その生涯の課題は、人間精神の開放であり、束縛からの自由であったといいます。火の宮のテーマをそれぞれ「人生は～である」という形で表せば、牡羊座は「人生は闘争である」、獅子座は「人生はステージである」、そして射手座は「人生は自由の希求である」と表現できるでしょう。彼は大詩人のゲーテ（乙女座）と親交を持ちましたが、彼らはおたがいの芸術を尊敬しながらも、どうしてもウマが合いませんでした。これは二人の相性が悪いためですが、次の二人の対立を表すエピソードは、ベートーベンの射手座的性質を浮きぼりにしています。

ベートーベン

あるとき二人が道を歩いていると、ワイマール大公とその一族に出くわしました。高級官僚でもあったゲーテは、道の端(はし)に退くと帽子を取り、一行が通り過ぎるまで最敬礼を続けていました。しかし、ベートーベンはそうした権力にへつらうゲーテを軽蔑(けいべつ)し、自分は堂々とそのまま進むと、皇族のほうが先に挨拶(あいさつ)するのを待ったということです。彼にすれば、自分たちのような大芸術家こそ真に偉大な人間なのだから、皇族といえども自分たちに敬意を払うべきであると考えたのです。ベートーベンの「オレ流の正しさ」ということでしょうか。

また、彼の交響曲第三番の『英雄』は、ナポレオン（獅子座）に捧(ささ)げられたものですが、ナポレオンが皇帝に即位したことを知った彼は、失望と怒りでナポレオンへの献辞(けんじ)が書かれた表紙を破り捨てたということです。射手座の主義主張へのこだわりが感じられます。

現在千葉県知事である森田健作は、かつて“青春の巨匠(きょしょう)”と呼ばれ、そのさわやかさが身上でした。しかし、それは天秤座の八方美人的さわやかさと異なり、主張すべきことは主張する「骨のあるさわやかさ」といえます。また、“正しさ”にあくまでもこだわる正義漢で、情熱的・行動的かつ冒険好きな熱中人間ということにおいて「永遠の青年」の趣(おもむき)がありますが、これはまた射手座的性質そのものともいえましょう。そして、こうした情熱も蠍座のそれのように執念深いネチネチしたものではなく、あくまでも秋の空のようなカラッとした情熱ですが、これは同時に、射手座の熱しやすく冷めやすいといった欠点、それもしばしばユーモラスでもある欠点に結びつきます。

これは彼が芸能界に入る前の話ですが、特攻隊を題材にした映画を見たことがありました。すると彼は、映画が終わるやいなや憂国(ゆうこく)の情にかられ、自衛隊に入隊して自ら日本の国を守ろうと決心します。そしてただちに入隊の申し込みに行きますが、そこの担当の係官は、彼の純粋な気持を察することなく、やれ昇給はどうでボーナスはいくらだとか金の話ばかりするので、彼はすっかりシラけてしまい、自衛隊入隊はとりやめてしまいました。

この彼の一連の行動は、じつによく射手座の性格を物語っています。まず、自衛隊入隊を考えた動機が、打算的なものではなく、純粋な心情によるものだったということです。射手座の場合、水瓶座の理想主義ほどのスケールの大きさはないのですが、行動の理由としては一般に、金よりも「正しさ」や「自由の欲求」が優先されます。そして次に、彼は考え迷うことなしに、即座に自衛隊へ入隊の申し込みに行きました。この思いついてから行動するまで熟慮(じゅくりょ)の期間がないということが、やはり射手座の特徴で、優柔不断(ゆうじゅうふだん)な魚座とは対照的です。しかし結局、相手の見きわめを誤った係官により、将来優秀な自衛官になったであろう青年は、制服を身に付けることなしに別の道を歩むことになりました。

その結果タレント森田健作が誕生したわけですが、読者のなかには「そんなことぐらいで入隊を取りやめたのは、その決心が最初からいいかげんなものだったのではないか」と言う人もいるでしょう。しかし、それは射手座の本質を知らない発言です。射手座はとにかく好奇心が強く行動的で、仕事も趣味も恋も冒険も、めいっぱい熱中します。同じく好奇心が強く活動的な星座でも、双子座のようにクールに器用にいくつも同時進行で行うというのではなく、一つのことに夢中になる……しかし、持続性がない。そのときは大マジメなのに、ちょっとしたきっかけで、あるいはその対象を知り抜いてしまったとき、急に熱が冷めてしまうのです（射手座とは逆に『熱しにくく冷めにくい』のが牡牛座です）。

牧瀬里穂や舛添要一も自分の性格を「熱しやすく冷めやすい」と言ってますが、江角(えすみ)マキコも、「その時その時で興味がどんどん変わる。過去には執着しない」ということです。また、観月ありさも「熱しやすく冷めやすい自分が嫌い。私は好奇心で生きているといっても過言ではないが、好奇心からいろいろなことに手を出しても長続きしない」ということを話してました。

この射手座の「熱しやすく冷めやすい」ということは、当然恋愛においても当てはまります。ベートーベンは激しい恋を何度もしながらどれも長続きしなかったということですが、佐藤江梨子も「恋愛で燃え上がっても、二カ月位で冷めてしまうことが多い」と話してました。また、小室哲哉の恋愛、結婚暦をみても、やはり「熱しやすく冷めやすい」射手座の典型であるといえるでしょう。彼は、かつて恋人の華原朋美（獅子座）と別れたあとＡｓａｍｉ（魚座）と結婚しましたが、十カ月で離婚。その離婚からわずか八カ月後にＫＥＩＫＯ（獅子座）と結婚しました。この三人は彼とみな相性がいいのですが、ＫＥＩＫＯとは格段にいいので、もう別れる可能性は少ないと思います。しかし、典型的な射手座の彼のことですから予断は許しませんが。

そしてもう一人、射手座の「熱しやすく冷めやすい」人間の例として、かつてオウム真理教のナンバー２で、刺殺された村井秀夫をあげたいと思います。次は『「あの子」がオウムに！』（有田芳生(よしふ)ほか著）からの抜粋ですが、射手座の性格の典型がそこに現れています。

「（村井は）のめり込みやすいタイプで何かをはじめると寝食を忘れて没頭。大学時代には動物の写真に凝(こ)って、全国の動物園を回ったり、シャボン玉が割れる瞬間を撮影するといって夢中になるなど、少年っぽい一面を持っていた。ただ『熱しやすく冷めやすい』と本人も自覚していたとおり、何ごとも長続きしなかったようだ」

先ほど、射手座の熱しやすく冷めやすい性質を欠点と述べましたが、これは必ずしも欠点とは断定できない面もあります。たしかに、次から次へと興味をもって手がけることがみな中途半端(ちゅうとはんぱ)に終わってしまうなら、短所といわざるをえませんが、それぞれをモノにして活動範囲を次々と拡大していくというのなら、見事というしかありません。そうした例として、作家の松本清張、ミュージシャンの小室哲哉、それに松下電器の創立者である松下幸之助があげられます。

松本清張は若いころ石版(せきはん)印刷の版下(はんした)画工となり、広告デザインにも関心を示しましたが、のちにグラフィック・デザイナーとして入賞したこともあります。こうしたことからも彼の多才ぶりがうかがえますが、同じ多才でも、魚座がその感性で、双子座が器用さで多くのことを難なくこなしてゆくのに対し、射手座はその飽(あ)くなき好奇心と情熱で次々と仕事の領域を拡大していきます。その火の宮らしいエネルギーということにおいては、他の二座を圧倒しているといえましょう。松本清張も、作家・評論家としてその守備範囲の拡大は、純文学・推理小説・社会小説・時代小説・ノンフィクション、さらには現代史や古代史における評論など、とどまるところを知りませんでした。

小室哲哉は、シンガーソングライターとして作詞・作曲・演奏・歌唱を行うのみならず、ＴＲＦや安室奈美恵（乙女座）などの音楽プロデューサーとして活躍し、時代の寵児(ちょうじ)となりました。また、吉本興業に所属してバラエティー番組に出演したり、仕事の合間を縫って経営セミナーの講師を務めるなど、行動の範囲は止めどもなく広がってゆきます。ただ、気功整体師の治療を受けないと過労で倒れてしまうというほどの、ちょっと異常とも思えるくらいの活動性から、筆者は、彼はじっとしているのが嫌いな双子座に月があるのではと考え、調べてみたらやはりそうでした（双子座っぽいクールな顔つきも、そう推測した原因の一つです）。すなわち射手座の拡大のエネルギーに双子座の活動性がプラスされ、しかもどちらも好奇心が強く多才な星座ですから、憑(つ)かれたように多くの仕事に熱中するというのも、「なるほど」と思ったしだいです。

松下幸之助は少年時代自転車屋に奉公(ほうこう)しましたが、数年たつと、そこを辞めて電灯会社に転職します。これは第一に、そのほうが将来性があると考えたためですが、やはり、自転車屋の仕事の内容をすっかり知ってしまうと、それに対する興味は冷めてしまって、電気事業という未知のものに対する好奇心の虜(とりこ)になったという射手座的性質による動機は否定できないでしょう。その後、彼は会社から独立してソケットを作る家内工業を始めますが、これが次から次へと拡大作用を重ね、ありとあらゆる電気関係の事業から住宅まで手がける現在の巨大な松下グループ（パナソニック）となったわけです。

ところで、松本清張と松下幸之助の共通点として、その射手座的な拡大作用ということとともに、論理性ということがあげられます。評論家でもある松本清張が論理的であるのは当然としても、松下幸之助も取引相手を説得するとき、見事な論理を展開させます。理屈に弱い日本人である取引相手の多くは、ポカンとして「なるほど、さようですなあ」と感心してしまうような、それぐらいの効果がある。これは射手座の卓抜(たくばつ)した論理性の現れですが、こうしたことに歯に衣(きぬ)を着せない批判力が加わるため、射手座には舛添要一、勝間和代、山本七平など、評論家が多いことは事実です。また、稲垣吾郎の映画批評も、射手座らしい鋭い指摘も見られ、乙女座の松本人志とともに「芸能人映画評論家」の一人といっていいでしょう。

この射手座の論理性ということについて、占星術師の先代の銭天牛(せんてんぎゅう)（山羊座）は、昔出版された占星術の入門書『ザ・占星術』のなかで次のように説明しています。（じつはこの『ザ・有名人占星術』のタイトルも、この本からとっています）

「高級な論理やきちんと整理された観念の世界を尊重するあまり、俗事や些事(さじ)、そして人間を無視する傾向もあります。したがって秀才で聡明(そうめい)な人が多いのに、作家が少ないのは示唆(しさ)に富んでいます。そのかわり批評や評論は得意です。鋭く問題点をつく力は、ほかの十一座の及ぶところではありません。射手座の論争に対抗できるのは、まったくちがった発想をする魚・蟹(かに)座ぐらいでしょうか。みんな射手座の放つ矢に傷つき、ハラをたてますから、自分の論理の優秀さにあまり有頂天(うちょうてん)になってはいけません」

しかし、この射手座の論理の優秀さで皆を傷つけ、ハラをたてさせ、得意になっていた人間がいました。かつてオウム真理教の幹部だった上祐史浩(ふみひろ)です。彼は早稲田大学理工学部在学中に、英語サークルに所属し、そこでディベート（討論）を上達させることに熱中します。そこで彼の射手座としての論理の優秀さが開花し、「ディベートの神様」の異名(いみょう)をとるほどになりました。しかし、皮肉にも、彼のそうした能力が最大限に発揮されたのは、オウム真理教の犯罪が日本中を震撼(しんかん)させ、彼が教団の「顔」として毎日のようにテレビに登場するようになってからです。黒を白と言いくるめることもできる彼の論理は、強弁となり詭弁(きべん)となり、「ああ言えばこう言う」をもじって「ああ言えばジョウユウ」なる流行語をも生み出しました。オウム真理教は科学技術のみならず、射手座の上祐の論争力といったものまで、徹底して「悪」のために利用したといえるでしょう。

さて、こうした射手座の性質、すなわち優れた批判力や論理性、因襲(いんしゅう)に束縛されることを嫌う反骨精神といったものは、一見、個人主義的で革新的な水瓶座と似ているように見えます。確かに射手座には、旧ソ連時代に政府批判を続けた作家のソルジェニーツィン、それにやや小粒でも社民党委員長で女性初の衆議院議長にもなった土井たか子のように反体制の闘士がいますし、水瓶座の反骨精神に牡羊座の激しさが加わったような強さがあるともいえるでしょう。

しかし、こうした射手座にも弱点があります。それは一つには、先ほど述べたように持続性に欠けるということですが、同時に、水瓶座ほどの革新性・独創性・スケールの大きさといったものがなく、保守的な人もけっこういるということです。実際、反骨精神旺盛(おうせい)なベートーベンにしても、その思想は根本的には保守的だったといいますし、土井たか子の社会党も、彼女が党首となっている間、“超保守政党”としての性格を強めたにすぎませんでした。こういうところに、社会改革のリーダーとして考えた場合、射手座の限界を感じざるをえません。

そして射手座と水瓶座の違いが端的に現れているのが、射手座経営者である松下幸之助が創業した松下電器（パナソニック）と、水瓶座経営者である盛田昭夫と稲盛和夫がそれぞれ創業したソニーと京セラとの、社風や経営内容による相違点でしょう。ソニーや京セラは、その独創性を世界に誇り時代の最先端をゆく水瓶座的会社ですが、これに対し松下電器は“マネシタ”といわれ、“モルモット”といわれるソニーの技術を模倣(もほう)して抜群の販売力で日本の市場を席巻(せっけん)しました。すなわち松下電器はその松下幸之助の射手座的拡大作用によりありとあらゆる電気製品を手がけてきましたが、それではどうしても優秀な研究者は分散してしまいますから、すべての製品が超一流とはいきません。それに蟹座的ともいえる保守的・家族主義的社風により、社員に独創性をそれほど期待できないし、また初めから期待もしていないということも事実でしょう。しかし、射手座の特徴は水瓶座のような独創性ではなくてその拡大作用にあるわけですから、それはそれでいいわけです。そもそも、松下幸之助の理想は、水準以上の製品をあくまでも安く湯水のように国民に供給するという量的理想であり、ソニーの盛田昭夫の理想は、最高の技術により独創的な製品をつくるという質的理想である、というようにその目的もはっきりと分かれていました。ただ、松下幸之助と盛田昭夫が亡くなってからは、両社の社風は昔とはかなり変わってしまったようですが。

（原文出处：http://www.s-w-sabo.com/astrology-Sagittarius.html ）